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| 原油価格高騰を考える |
| 元研究員 三角 昌也 |
| はじめに |
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2004年10月15日ニューヨークのマーカンタイル取引所(NYMEX:New York Mercantile Exchange)で原油先物が続伸、WTI(West Texas Intermediate)原油で期近の11月物は一時1バレル55ドルちょうどをつけ、1983年の取引開始以来の最高値を更新した。原油価格は実は2003年ころから上昇を重ねてきたが、2004年の夏から秋にかけての高騰により日本でも重要ニュースとして一般にも知られるようになってきた。今回はこれら一連の原油価格高騰の原因を考えてみる。 |
| 1.原油価格高騰の推移 | |
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第一の特徴は、2003年以降特に価格が上昇していることである。下のグラフは2004年12月時点までのデータであるが、2005年以降も価格は高水準のまま推移している。もう1つの特徴は、2003年以降の傾向としては、東京市場ドバイ原油価格とNY市場WTI原油価格の差が大きくなっていることである。2004年10月には15ドル以上と特に大きい。 2005年に入っても原油価格は高止まりが続いており、2005年6月末時点では、1バレル60ドル台という歴史的な最高値を記録し、東京市場でも53ドルという最高値圏での値動きである。 原油価格平均値の推移
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| 2.原油価格高騰の発端 | |
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2004年以降新聞、雑誌や各種論文では、原油価格の高騰原因をさまざまな視点より論じられているが、私は今回の高騰の発端はアメリカでのガソリン価格高騰であると考える。もともと、WTI原油はアメリカテキサス産の硫黄分が少なく、ガソリン精製やジェット燃料等に適した軽質油で、NYMEXで先物が取引されている。WTIの実際の生産量は、1日当たり50万バレル程度だが、先物は1日当たり2〜3億バレルも取引されるようになってきている。80年代後半以降にOPEC(石油輸出機構:Organization of the Petroleum Countries)の価格支配力が弱まるにつれて、世界のなかで相対的にマーケット規模の大きいWTI先物原油の価格は、国際的にも高い指標性をもつようになった。 アメリカでのガソリン価格高騰の原因としては、まず、環境問題がある。有鉛ガソリンから無鉛ガソリンへの転換の際にMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)が配合されることになっていたが、このMTBEがガソリンスタンド地下の貯油タンクより漏洩し地下水を汚染したことで、環境問題となり、アメリカの環境保護庁がMTBEをガソリンに転換することを禁止すると決定した。 さらにこのような流れに対し、ガソリン施設の改良や新設の投資に関する許可等の対応が遅れ、夏のガソリン需要期を前に、改質ガソリンの在庫が平年にくらべ低下した。改質ガソリンの在庫の異常な低水準がガソリン全体にわたる価格高騰を引き起こし、これが引き金になり市場で原油買いがおこり、原油価格高騰が引き起こされたといえる。
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| 3.SPR問題(戦略的石油備蓄:Strategic Petroleum Reserves) |
9.11テロ後、アメリカはSPRを7億バレルまで増強することを決定した。これに関連する動きも原油価格高騰の大きな一因ともいえる。(以下「石油を読む」藤和彦より)
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| 4.需給バランス |
世界の原油需要は年々増加している。グラフでみると、特にアジア太平洋地域と北米での増加が顕著である。その主たる増加国は中国とアメリカである。中国では2000年以降急激に増加しているのがわかる。2010年の中国の需要予測は、2004年の約2倍にまで増加の見通しである。中国の石油需要は日本を抜き、世界で二番目になっている。さらに今後も中国の石油需要は他国を大きく上回る速度で伸びると予想されている。
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| 5.中東地域での供給不安 |
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原油を考える上で中東地域は特別な地域である。可採埋蔵量等も潤沢にあり、かつ原油の輸出に関しても中心地域である。その上、中東地域の中のOPEC加盟国での生産余力は200万b/dと残りわずかであるとの予測である。原油産地中東地域での供給不安予測により原油価格が高騰したともいわれる。 原油輸出の流れ 資料:BP統計2004 上の図から、中東、特にサウジアラビアとロシアの原油輸出量がいかに多いかがわかる。と同時に日本では中東依存度が高いことや中国の輸入量は日本に比較して少ないことがわかる。 |
| 6.OPEC(石油輸出国機構:Organization of the Petroleum Exporting Countries) |
2004年はOPECにとっても大きく動いた1年であった。
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| 7.地政学的要因 | ||
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| 8.投機対象としての原油 |
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世界的に需要が上昇しているのは確実である。需要が増大している地域としては、中国とアメリカが上げられる。供給の面では、イラク戦争やそれに伴うテロ活動の悪化により、中東地域の治安悪化等も懸念されている。新たな油田開発もあまり進んでいないため、既存油田での生産活動の障害がすべてリスク換算され、市場価格を左右する原因にもなっている。 昨年でいえば、これまで述べてきたように、アメリカメキシコ湾への大型ハリケーン「アイバン」による被害やそれに伴うSPR貸与問題、ロシアのユコス問題、ナイジェリアの政情不安やベネズエラのスト等もすべて必要以上に大きなリスクととらえられた感がある。確かにリスクではあるが、全体的な需給バランスではタイトではあるものの、石油不足は起こっていないといえる。しかし、タイムリーに需給関係を知ることが難しいため、不確かな予測が先行することに陥る。
原油は市況商品として、取引され、市場もそれに伴い発展・高度化していった。このため、90年代半ばからはむしろ、石油市場の発達・グローバル化に伴い、原油価格の変動性(Volatility:ボラティリティー)が激化し、「石油市場のカジノ化」の要素が濃くなっていった。本来の需給関係により上下する価格ではなく、実需以上の投機的な価格が高水準で続く根底には異常のような経緯も考えられる。 |
| 9.おわりに |
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今回の原油価格高騰は、新聞・ニュース等によりさまざまな報道がされているが、発端としては、アメリカのガソリン不足に始まるといえよう。しかし、その他にも投機マネーを動かす要因として、地政学的な考えにより価格が実需とはかなり乖離した域にまで高騰したともいえる。中国やインド・アメリカ等での需要の急拡大により需給関係が不安定になるというのも正確な情報であるかは疑わしい。というのも世界的な規模でみるとバランスは安定的といえるデータも確かに存在するからである。しかし、原油は需要関係のデータをタイムリーに知りうる手立てが欠乏していることもあり、市場において憶測が飛び交い、市場参加者自身が何か少しでも先行きを読める確かな情報がないかと探し、時には自らがひとつの大きな流れをつくるという傾向が大きい。 原油という1つの商品の背景には、基本的な需給関係だけではなく、WTI原油市場等先物市場の動きが大きく影響するのを再認識した。さらにその価格決定へ影響を与えるものとしては、世界各地の政治や事件・事故から環境問題・気候までさまざまな事象が存在し、互いに複雑に関連してくる。今後の価格があまりに高騰を続けると、石油各社の利益が増加し、その利益により油田開発が促進され、供給条件が良くなるという情報が流れる。それに従い、市場からは売りが多くなり、価格高騰が沈静化するという原油独特の方程式に入ることも十分考えられる。そのため、悲観論・楽観論さまざまな見方が飛び交っている。今後の価格推移にはさらに継続して注目していきたい。 |
| 参考文献・資料 |
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「石油を読む」 藤和彦 日本経済新聞社 「石油のおはなし」小西誠一 日本規格協会 「今日の石油産業2005」 石油連盟 「石油神話」 藤和彦 文春新書 「世界を動かす石油戦略」石井彰・藤和彦 ちくま新書 「石油の経済学」 萩田穣 アートデイズ 「Oil Market Report」IEA 「原油レポート」 UFJ総合研究所 「原油動向と世界経済への影響」 柴田明夫 丸紅経済研究所 「ボドルコフスキー・ロシア最高経営者の逮捕から1年」 笠井達彦 日本国際問題研究所 「高騰する原油価格の背景と今後の展望」 小山堅 (財)日本エネルギー経済研究所 「2005年の国際石油情勢と原油価格展望」 小山堅 (財)日本エネルギー経済研究所 「WTI原油先物」 木村俊文 農林中金総合研究所 「テロ多発の中で日本企業の対サウジ投資相次ぐ」 大住政孝 (財)日本エネルギー経済研究所 「2004年度後半の世界政治・経済」三井物産戦略研究所WEBレポート 石油情報センターHP 日本経済新聞 東京工業品取引所HP 日経ニュースHP |
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