ホーム | サイトマップ | リンク

ホーム > 調査研究 > 自主調査実績(年度別) > 平成14年度 > 地域通貨によるコミュニティの再生

地域通貨によるコミュニティの再生

第4章 地域通貨の一般的課題

第1節 地域通貨の法的な問題
第1項 地域通貨に関係する法律

地域通貨利用上、次の法律が関係してくるものと考えられるため留意する必要がある。

  • 紙幣類似証券取締法
  • 前払い式証票の規制等に関する法律
  • 出資の受入れ、預り金及び金利の取締りに関する法律(出資法)
  • 信託法、銀行法
  • 税制上の取扱い
  • その他 労働基準法/通貨払いの原則・直接払いの原則・全額払いの原則・保険制度整備の必要性
 (1)紙幣類似証券取締法(明治39年5月8日法律第51号)
  • 第1条 一様ノ形式ヲ具ヘ箇々ノ取引ニ基カスシテ金額ヲ定メ多数ニ発行シタル証券ニシテ紙幣類似ノ作用ヲ為スモノト認ムルトキハ主務大臣ニ於テ其ノ発行及流通ヲ禁止スルコトヲ得
  • 2 前項ノ規定ハ一様ノ価格ヲ表示シテ物品ノ給付ヲ約束スル証券ニ付之ヲ準用ス

この法律は、国および日本銀行の通貨発行権を独占的権利として保護するため、明治39年に制定されたものである。

「紙幣の機能とは、何処でも、誰でも、何にでも支払いないし決済の手段として利用できることであるとしており、基本的にこのいずれかの要素が欠ければ紙幣類似とはならない」・・・大蔵省(現財務省)の見解である。

「どこでも」とは、単一店舗、単一施設等の限定があれば、紙幣類似とはならない。

「誰でも」暗証番号等で使用できる人間が特定されていれば、紙幣類似とならない。

「何にでも」家計の消費活動のうちの相当部分をカバーしうるまでの汎用性に至らなければ、紙幣類似とはならない。

要するに、地域通貨が実態経済の中で、法定通貨に混乱を生じさせなけば規制の対象にはならないと考えてよさそうである。地域限定型で流通する地域通貨は問題ないものと考えられる。

 (2)前払い式証票の規制等に関する法律(平成元年制定、プリペイドカード法)

「前払式証票の発行者に対して登録その他の必要な規制を行い、その発行等の業務の適正な運営を確保することにより、前払式証票の購入者等の利益を保護するとともに、前払式証票に係る信用の維持に資すること」を目的とするものである。

(前払式証票) 証票等や電子・電磁的方法によって記録されている媒体に、金銭およびそれに準じた対価を得て発行されるもので、それを発行者等から物品の購入やサービスなどを受けるときにその決済に使用できるもの。
上記のもので、物品又は役務に応じて対価を得て発行されるもので、発行者に対して当該物品・役務の提供を請求できるもの。
NTTのテレフォンカードやJRのオレンジカード等に適用される法律である。
適用除外 ・国又は地方公共団体等が発行するもの。
・発行者の従業員に対して発行される自家発行型前払証票およびこれに類するもの。
自家発行型前払式証票は、流通残高が700万円以上の場合に届け出が必要となり、1000万円を越えると保証金の供託が必要となる。

「第三者発行型前払式証票の発行業務は、金融再生委員会の登録を受けた法人以外は禁止されている。ただし、有効期限が6カ月間以内のものは届け出の必要はない」と規定されている。このため6ヶ月以内の有効期限にしている地域通貨も見受けられる。基本的には、地域通貨の形態が商品券やプリペイドカードに準ずるものと判断される場合に適用されるが、円との兌換性がないものでは問題ないものと考えられる。商店の発行するクーポン券はこれに該当しない。

但し、「円と地域通貨を交換する」や「地域通貨を円で購入する」という表現は、利用者にプリペイドカードの印象を与えるため改善する必要がある。

 (3)出資の受入れ、預り金及び金利の取締りに関する法律(出資法)

「不特定かつ多数の者に対し、後日出資の払戻として出資金の全額又はこれを超える額を支払うことを示して出資金の受入れをすることを禁止している。

また、銀行、信用金庫、農協等のように法律で定められた者以外が、業として預り金(不特定かつ多数の者から金銭の受入れで、預金、貯金又は定期積立金の受入れ及び何らかの名義をもってすることを問わず、これらと同様の経済的性質を有するもの)をすることを禁止している。」

地域通貨「おうみ」では、寄付(カンパ)へのお礼としてカードを発行しているので、この法律の適用は受けないとしている。

 (4)信託法、銀行法

基金を集めて運用する場合は、信託法、銀行法に抵触しないように運用する必要がある。

第2項 税制上の取り扱い
 (1)消費税

間接税である消費税は、物品、サービスの対価に対して課税される。事業者が事業として行う取引に対して課税されるため、地域通貨の受入れ率によって課税対象となる。しかし、中小事業者の負担軽減制度 【免税事業者制度(年間売上額が3000万までの事業者)、簡易課税制度(売上額2億円以下)】もあり、小規模商店や個人間の取引では課税対象とはならない。

 (2)所得税

地域通貨を受け取った企業が、社員やアルバイトなどに支払う場合、個人の所得と見なす場合、課税問題が発生する。一時所得の場合は、50万円までは非課税である。しかし、業務範囲内で受けた所得は給与所得と見なされ、課税対象となる。日本においては、給与として地域通で支払っているところは少ないと思われる。

第3項 その他の関係法令等
 (1)労働基準法

地域通貨で給与を支払う場合が生じた場合は、労働基準法に従って対応する必要がある。即ち、「現金でその全額を直接労働者に支払わなければならない」(最低賃金制度、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則)という原則を遵守しなければならない。

 (2)保険制度

地域通貨による、「してほしいこと」、「できること」のマッチングでサービスをする場合、怪我をしたり相手に怪我を負わせる等の問題が発生する。当事者の法的責任が生じ、損害賠償をしなければならない。ほとんどのところでは、ボランティア保険に入っているが、ボランティア活動は無償が原則であるため、地域通貨を受け取ったとき、有償なのか無償なのかが不明である等が指摘されている。今後、ボランティア保険等の整備も必要である。

資料:

  • 地域通貨おうみ委員会のHP、「論文・参考資料メニュー、地域通貨の税金・法律問題」
  • 地域通貨おうみ委員会発行資料集:「おうみ」を使って地域を元気にしよう
  • 中小企業庁:「地域通貨を活用した商店街等の活性化に関する調査調査報告書」(平成14年3月)
  • 北海度自治政策研修センター「豊かなコミュニティづくりを目指す地域通貨の可能性」
第2節 地域通貨を推進する場合の課題
第1項 地域通貨の目指すものの明確化

地域通貨のターゲットを何にするか、地域通貨を進める上で非常に重要な要素である。

地域通貨が注目されている背景は、既に見てきたように地域内における(1)住民のふれあい交流の活性化(2)ボランティア活動、NPO活動の活性化によるまちづくり(3)地域経済の活性化及びこれらの複合的なものを目指して導入されてきている。

地域内において地域の特性を把握して、有効な地域通貨を設計していく必要がある。

第5章 和歌浦地区への導入の項の具体的なイメージを参照)

第2項 地域通貨の規模

地域通貨の規模についてどの程度にすればよいのか、千葉県の「ピーナッツ」では2002年9月で会員数595名であり、管理にかかる作業量やコストの増大、会員間の交流(マッチング)が不十分になること等の課題が挙げられている。また、NPO法人C.S.神戸が運営する東灘の山の手にある「鴨子ガ原」の地域通貨「かもん」では、人口の約3〜4%の100〜150人が住民のお互いの顔が見え、成功しやすい規模であるとNPO法人C.S.神戸理事長中村氏が言っている。地域通貨「おうみ」の会員数は200人であり、NPO法人地域通貨「おうみ」委員会に代表、事務局を置いているが、ほとんどはボランティアで運営されている。あまり規模が大きすぎるとやはり会員間のマッチングの不十分さ、管理のためのマンアワー、その他経費の増大が考えられ、運営費を捻出していかねばならない。

組織が充実している場合は、1000人程度の規模でも可能であるが、やはり、一般的には100人前後の規模が最適であろう。

第3項 地域通貨の地域への定着化

地域通貨を一旦立ち上げても、継続して地域通貨が循環しなければならない。地域通貨「おうみ」では住民間のマッチングを図るため、会員のために「ふれあい交流会」を開催し、ふれあいを促進している。また、身近な環境問題として生ゴミの堆肥化のため農業とタイアップし、生ゴミを堆肥化し農業に提供することにより「おうみ」を手に入れ、農家の生産者から野菜を購入する時に「おうみ」で購入できる「たさいくるプロジェクト」を実施している。このように、住民が参加しやすい環境を創りだし、定着化を図っている。いずれにしても、地域通貨を使いやすいように、住民が参加しやすいような仕掛け作りが重要である。一般的には地域通貨会報により、住民への広報、コーディネーターによるお互いのマッチングを行う手助けをすることにより定着化を図っている。

第4項 地域通貨の評価方法

地域通貨による効果の評価をどのようにするか、目に見える効果、目に見えない効果を考える必要がある。

コミュニティの活性化、まちづくり、地域経済の活性化について次表にまとめてみた。

表  地域通貨の評価方法

コミュニティ、まちづくり、地域経済の活性化
目に見える効果 (1)地域通貨の循環回数から、ふれあい回数の把握
  • 取引回数から年間のコミュニティのふれあい機会を把握し交流機会として評価する。地域通貨「きしゅう券」では、パソコンにより流通経路を解析するソフトで評価しようとしている。
(2)町並み景観の変化(ゴミ、花いっぱい)
  • 千葉県「ピーナツ」では、「ゆりの木商店街」だけでなく、西千葉の周辺に「ピーナッツクラブ西千葉」が誕生し、新しい仲間の交流が始まり、町の通りに草花がきれに手入れされ町並みが綺麗になった。
(3)売上増
  • 千葉の「ピーナッツ」では:平成13年商店街の売上が対前年5%アップした。また、平成14年1〜2月は対前年同期比 10%アップ 店によっては27%アップした。
目に見えない効果 (1)自分や他人の能力開発
  • 「できること、してほしい」ことから、潜在能力の誘引ができる。東京都町田市では、1はな=1円として、紙幣のデザインを町の埋もれた画家が描き、地域の芸術家を発掘した事例がある。
(2)町への帰属意識を高める
  • 自分達の町のよさを知り、自分達の町を守ろうとする意識が醸成される。
(3)コミュニケーションの活発化
  • 一人暮らし老年者とのコミュニケ―ションが活発化する。また、イベント等を若い人が企画化し地域の老若男女が交流しコミュニティが活性化する。
第5項 実施上の課題
 (1)中心となる母体及び人材の必要性

地域通貨を地域内で立ち上げる場合、海外、国内ともに、NPOや地域内の個人が地域を活性化しようとして地域通貨を立ち上げてきている。

最近はNPO法人が数多く設立されており、これが中心となっている場合が多い。

いずれにしても、地域内に地域を活性化させようと熱心な人材がいることが必要である。

研究会などを立ち上げて先進例を研究し、自分達にあった地域通貨を目指している。

 (2)地域住民をまきこむ

地域通貨は地域内を循環することが必要であることから、地域住民を巻き込んだものにしなければならない。このためには、住民への説明が不可欠である。

分りやすいパンフレット、(資料:「きしゅう券」、「ふれあい切符」参照)で説明を行う。同時に、分りやすいビデオなどが参考となる。(NHK大阪で放送された「おうみ」の内容やNHK「こどもニュース」で放送された内容なども参考になる)また、(財)さわやか財団が発行している、地域通貨キットも非常に有効であり、体験をすることにより地域通貨の概要が理解される。

 (3)はっきりした目的、理念コンセプトの構築

地域通貨は一般的に、(1)住民のふれあい交流の活性化、(2)ボランティア活動、NPO活動の活性化によるまちづくり、(3)地域経済の活性化及びこれらの複合的なものを目指して導入されてきているが、はっきりとした目標及び理念を持って地域通貨の実施にもっていく必要がある。

 (4)運営費

NPO法人や民間の少人数から地域通貨が立ち上がってもやはり運営費というものが必要になってくる。電話代、地域通貨の印刷代等の経費が必ず生じる。持続的に運営していくためには継続的な運営費の捻出が必要である。国内の地域通貨をみてみると、一般的には会員からの入会金、年会費でまかなっているところが多い。地域通貨で全国的に名が知れ渡り見学者が多い場合は、見学者からの地域通貨への協力金として徴収している。また、地域通貨に対する書籍の販売、講演等からも運営費を得ている。

プロジェクト的に進めている場合は、広く寄附金として運営をまかなっている。

 (5)コーディネーター

地域通貨が立ち上がり、会員から提出された、「できること」「してほしいこと」を登録するのであるが、見知らぬ人と取引をするのはなかなか出来ないものである。そこで、事務局のコーディネーターが仲介役を買ってでて取引を成立させている。

例えば、「おうみ」の「ふれあい交流会」においてコーディネーターによるマッチングを行っている。北海道の栗山町の「クリン」では現在2001年9月から18ヶ月にわたり第3次試験流通が行われており(参加者704人)コーディネーターによるマッチングが行われている。

地域通貨「きしゅう券」では会員の第1回目のマッチングには必ずコーディネーターがマッチングをすることになっている。第2回目からお互いに交換が出来ればコーディネーターを介さずにマッチングを行うようにしている。しかし、上手くいかない場合は必ずコーディネーターが介在することにしているようである。

 (6)プライバシーの保護の問題

ふれあい福祉面で地域通貨が使われる場合、「やってほしいこと」「できること」のマッチングにおいて、取引が成立したとき、自宅へ招き入れなければならない場合がある。この時に、プライバシーが守れない場合が生ずる。ある地域では、家の中には入れなく玄関までとしているところもある。地域通貨に入会するときに信用のある人かのチェックも重要であるが、マッチングするときのコーディネーターもお互いに信用ある人であることを保証する必要がある。

 (7)閉鎖系から解放系への志向

地域通貨は、地域内で流通する通貨であるために、当初の目的がお互いの助け合いである場合は、地域内で地域通貨を流通させなくてもお互いに助け合いが出来る場合は、地域通貨の本来の目的が達成されたことになり、このような場合初期の目的が達成されており、地域通貨を止めても一向に構わない。また、地域の商店街においても大型店への人の流れを商店街へ呼び寄せることが出来れば一時的な売上が増加するであろう。しかし、地域内の閉鎖系の中ではやはり限界が見える。この閉鎖系に陥らないために、外部との交流が欠かせないことになる。ここに、人を地域に呼び寄せるプロジェクト指向の地域通貨が有効となる。

その一つが、「コミュニティ・ウエイ」のシステムであろう。このコミュニティー・ウエイのシステムを活用した事例として渋谷の「アースディマネー」があり、第3章で詳述した。

第6項 地域通貨を立ち上げる場合のステップ

地域通貨立ち上げ時の導入ステップ例として「ふれあい切符」の場合を記述する。

 (1)理念を話す

自分達の地域をどのようにしたいか、いま何が必要とされているか。何を、誰に、何のためにするのか明確にする。

 (2)中核となるメンバーづくり

何事も、物事を進めるためには、あることに情熱をもって進める人がいるから成功する。地域通貨に賛同して取り組む意欲のある人、5〜6人を探す。

 (3)目的と事業内容の確定

メンバーが決まれば、地域通貨を取り入れる目的、何をするのか、例えば、コミュニティの再構築、商店街の活性化、福祉サービスの充実、環境保全、異世代間交流、子ども達の健全育成等の事業内容の具体化をする。

 (4)発足会員の確保

事業内容が決まれば、協力してくれる会員を集める。

 (5)実験

会員間で実際にやってみる。地域通貨の楽しい名称等を決める。通貨方式も決める。また、「してほしいこと」「できること」を登録し、コーディネーターを会員の中から決め、実験にはいる。

 (6)拠点づくり費用の捻出

NPO法人等既にある組織では運営費は確保できている場合があるが、いろんな経費が出てくるため、みんなで負担していく会費制をとる場合が一般的である。

 (7)自立した組織

お互いが支えあって、安心して生きていける地域づくりが地域通貨の目的である。継続して進めていくためには、組織として経済的に自立していかねばならない。自立した組織への仕組み等を考えていく必要がある。

第7項 地域通貨における行政との関係

地域づくりなど色々な事業が行われる場合、行政との関係がいつも話題となる。事業を実施する側からすれば、運営資金はどうしても必要なものであり、行政からの補助金はありがたいものである。行政側から見れば、市民活動により地域が活性化することは、行政の目標とする一つでもある。行政側と市民側との関係をいかにすべきかという問題に対して、一つの行き方が地域通貨「きしゅう券」に見える。

即ち、地域通貨「きしゅう券」の場合、本来の市民活動では行政の支援を最初から期待することなしに、自らの力で事業を進めていくが、途中行政側が支援を申し出てきた場合は、受け入れ協働事業として進めていくという基本的態度で臨んでいる。

行政側からの申し出があれば、広報・啓発、研修会等の支援を受けることにより、広く地域通貨を周知する役目を担っていくことが出来る。さらに、地域通貨が発展しネットワーク化していく場合にも当然、行政の力を借りなければならない。

このページのトップへ