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地域通貨によるコミュニティの再生

第1章 今、なぜ地域通貨か

第1節 コミュニティの衰退と再生
第1項 産業革命から現代までの社会変化

18世紀後半イギリスにおいて道具から機械への発明及び蒸気機関という新しいエネルギーと豊富な石炭、鉄を獲得することにより、社会・経済・産業に大変革がおこった。いわゆる産業革命である。産業革命をきっかけとして、機械を使用し安価で良質な商品が大量に生産されたことにより、従来の手工業、家内工業は立ち至らなくなってきた。このことをきっかけとして資本家と労働者という階層が明確化し、資本家は社会・経済・政治において支配的になっていった。19世紀にはいってイギリスに遅れ、ベルギ−、フランス、そしてドイツ、アメリカで産業革命が、19世紀末にはロシア、日本で産業革命が起こった。このようにして、資本主義体制の確立が図られていく一方で、労働力の集約化が起こり、都市への人口集中による社会問題や資本家と労働者による労働問題等が引き起こされてきた。20世紀はじめまでに産業革命を成し遂げてきた国々が、現在、先進工業国としての地位を確立し、富の集中化を引き起こしてきている。資本主義体制と技術の進展により我々は生活の快適さ、物質的豊かさを手に入れ生活環境は大きく変わった。資本主義社会における経済の発展はお互いの競争の上に、いかにして存続していくのかが、重要な課題となってきている。しかし、一方で富の集中と同時に都会への人口集中を引き起こしている豊かになった先進国では、出生率の低下に伴う若年層の人口減少による高齢化社会へ、経済発展に伴う環境破壊により人類のみならず多様な生物の存亡の危機をも招いてきている。

地球の資源を利用し、豊かさを求めることはとりもなおさず自然に対して影響を与えずにはいられない。このような競争のなかで、日本では経済の悪化、高い失業率、国、地方の負債がGDPの1.5倍の600兆円となっており、地域経済も疲弊し活性化されていない。また、従来とは異なる新しい犯罪も惹起され、社会全体の連帯感が薄れてきている。

ここに、これらの問題を解決するための人類の叡智が求められるところである。

第2項 お金(通貨)について

このように発展してきた資本主義社会を支えてきたものが、お金(通貨)である。我々は、物々交換から、お金という交換媒体により、血液が人体のなかを循環するごとく、お金を社会の中で循環させることにより経済を発展させてきた。

お金は、ある「何か」を交換媒体として使うという取り決めである。それが紙幣であったり、硬貨であったりする。円やドル等は国が保証する法定通貨(国家通貨)である。

お金の一般的な機能として、(1)ものやサービスの交換機能、(2)ものやサービスの価値の尺度、(3)ものサービスに価値保存手段、(4)決済手段等があげられる。

しかし、お金に利息が付加されことより、お金は単に交換や決済のみならず、投機の対象になり、本来の機能から逸脱してきた。このことにより一層資本の集中化が加速され、資本主義社会における熾烈な競争社会が形成されてきたのである。

国内のみならずグローバル化により、国内競争から国際競争へと進展してきており、国家通貨のお金に利息がつくことより、利が利を生み、一握りの大資本家へ富の集中が引き起こされてきている。しかし、我々は仕事をし、その代価として法定通貨のお金を手に入れ生活の糧としているかぎり、欠くことのできないものであり、重要性は変わらない。

しかし、競争、競争のなかでは、勝って良い目をする者がいる反面、負けてつらい思いをする者がいる。「これは、資本主義体制におけるお金のシステムが根本的に係っているからである」と考えられている。

第3項 コミュニティにおける人とのふれあいの希薄化要因

コミュニティ(Community)というラテン語の語源は、「お互いに贈り物を与えあうこと」である。コミュニティの崩壊は、互酬性のある「贈り物」の交換から、互酬性のない「お金」による交換にとって変わるときに衰退するといわれている(ベルナルド・リヒター著「マネー崩壊」より)。従来、向う三軒両隣や地域において、「お互い様」としてお互いに物を貸したり借りたり、ものを供与したり授与したりと地域で助け合ってきた。しかし、プライバシーの保護から「隣は何をする人ぞ」というお互いに干渉しない、されたくないということから互酬的な機能がなくなってきている。また、少子・高齢化、核家族化、共働き等により家族内におけるふれあいや、人々が会社と家庭間の通勤、付き合いも職場の人という生活習慣では、地域とのふれあいも希薄とならざるを得ない。

グローバル化により、第2項で述べたように地域経済も大資本との競争により地域の資源が大資本に吸収されるため衰退してきている。

失業率が高い現代においては、地方における雇用環境は大都会より更に悪い状態を呈している。

若者の雇用環境が悪いことは、若者の職を求めて都会への移動を促進させている。

一方、若者の移動によりコミュニティ内では、移動が不可能な高齢者が取り残されるため、高齢者世帯が多くなり、活力が低下している。同時に、かつてあったコミュニティ内の互酬的なふれあいがなくなってきているのである。

第2節 コミュニティ再生手段としての地域通貨
第1項 地域通貨とは

第1節、第3項まで述べてきた資本主義の競争社会におけるお金は、我々にとって生活のために必要なものであるが、これにより失ってきたものも多い。この法定のお金のシステムによる競争社会の経済を陽経済又は人体で言えば昼に働く交感神経的な経済であり、一所懸命働いて儲ける経済である。

しかし、人体において、夜に副交感神経が働き休息モードに入り、翌日の活力を引き出すように、経済社会においても安らぎを与え、陽経済を補完する副交感神経的な陰経済が必要とされる。

この陰経済、副交感神経的経済を活発にする手段としてのお金、それが「地域通貨」ではないかということで、全国的に地域通貨が注目されている。法定通貨の円とは異なり、限られた地域でのみ流通する通貨であり、市民自らが発行し、地域通貨に賛同した会員のみが利用でき、利子がつかない通貨である。したがって、国が発行する日本円や米ドル、ユーロなどの法定通貨のように不特定多数の人が利用する通貨ではない。

「法定通貨」に対して、「地域通貨」は、コミュニティ(地域社会)が独自に発行し、ものやサービスを特定の地域やグループの中で循環させることによって、市場では成り立ちにくい価値(コミュニティ内におけるお互いの助け合い、買い物、ゴミだし、植栽の水遣りなど)を支えていくための手段であり、地域経済の活性化・安定化や、衰退しつつあるコミュニティの再構築を目指し、持続可能な社会形成に有効に使用されるものである。

補完通貨、自主通貨、自由通貨、会員制通貨、エコマネー、ふれあい切符などと呼ばれる場合もあるが、「地域通貨」が一般的な呼び名である。

利子のつかない通貨であり、貯蓄をしたり、ためこむことが目的ではなく、地域の人々がこの地域通貨に賛同、参加し、お互いが助け合うことで地域をいきいきとよみがえらせることが目的である。

第2項 コミュニティ再生への地域通貨への期待

特に、先に見てきたようなコミュニティにおける、お互いが助けあう互酬的精神が薄れてきている一方で阪神淡路大震災を契機にボランティア活動が活発化してきている。

このボランティ活動に対して受ける側がお礼をしたくても、法定通貨の円ではボランティアの人に失礼でありボランティアの意味がなくなってしまう。「これらのことを満足させるものが地域通貨である。」と言うことが、今、地域通貨が注目されている理由の一つである。

一般に地域通貨はNPO法人等が中心になって地域活性化のために発行し、管理をしている。地域通貨により、コミュニティ内で自分が提供できるサービスやものを登録する。一方、登録されたサービスやものを捜し、商談を成立させ地域通貨で支払ったり受け取ったりする。ここに、むかしながらのお互いの助け合いが、地域通貨を通して活発になっていく。

ボランティアの人にも、地域通貨を支払うことでお礼の気持ちが表され、お互いに信頼関係が生まれ、地域が活性化することが期待される。

第3項 法定通貨と地域通貨の相違

法定通貨と地域通貨の比較の概略を下表に示す。

表 法定通貨と地域通貨の比較

法定通貨(円、ユーロ、ドル) 地域通貨
発 行 中央銀行(日本銀行) 市民の手
流 通 全国 限られた地域
利 子 あり なし
特 徴 貧富の差拡大 なし
冷たい通貨 温かい通貨
強い通貨 弱い通貨

法定通貨は利子が付くため、お金のあるところでは先に述べたように、利子が利子を生み、富が集中していく。法定通貨は我々にとって現在、無くてはならないものであるが、人に冷たい通貨である。一方、地域通貨は、利子は付かず、地域のみに流通する通貨であり、貯めても役立たないが、お互いの助け合いのサービス等に支払われる温かい通貨と考えられている。

第4項 一般的な地域通貨のスキーム

地域通貨のスキームは下記のように考えられているものが一般的である。

地域通貨を総括する事務局(NPO法人等)が中心になり、事務局は地域通貨の発行、会員入会手続き、各種イベントの企画、会員同士の情報交換の支援(サービス等の情報交換)等、地域通貨を推進する上において重要な役割を担う。

会員は、お互いに「できること」「して欲しいこと」を登録し、ルール(地域通貨の基準等)にしたがってサービスやものの交換を行う。

地域通貨のスキーム

第5項 地域通貨活用分野及び緒類型

コミュニティの互酬性、互助性が薄れて居ることから、地域通貨の活用は、お互いが助け合うために流通させるものがほとんどであるが、地域通貨が各地で活発に利用されるに従って、広範囲に地域通貨について研究がなされてきている。活用分類について下記の文献から引用する。

(1)中小企業庁の調査報告書「地域通貨を活用した商店街等の活性化に関する調査」平成14年3月による分類
1.目的による分類
  1. コミュニティ志向型:地域コミュニティの再構築や新たな人間関係づくり
  2. プロジェクト型:地域やコミュニティの付加価値を高めたり、社会的なニーズのある公益性の高い活動を支援することを目的とした地域通貨。
  3. 経済循環志向型:地域外への富の流出を防止しつつ局所的な経済循環を促進することで、地域の商業・経済の活性化につなげることを目的とした地域通貨。
2.地域による分類
  1. 都市・中心市街地:大都市の中心部にある、商業・経済の中心的な機能を担う地域において活用される地域通貨。商店や商店街等が何らかの形で参加している。
  2. 郊外・都市近郊:大都会の周辺に位置する住宅の多い地域において、地域への帰属意識の薄い住民の人と人とのつながりを創出し、地域のコミュニティの構築を目的とした地域通貨。
  3. 農村・過疎地域:大都市から離れた人口の希少な地域において、a)地域福祉の質的向上、b)大都市から移住してきた新住民との交流、c)農家など自作の農産物等を地域内で流通・交換させる地域通貨。
  4. インターネット:仮想のコミュニティにおいて、インターネットを介して会員同士で商品・中古品やサービス等のやり取りを通じて相互の交流を図っている地域通貨。
3.規模による分類
  1. 実施地域と規模:都市部においては大規模な地域通貨が見られるが、農村部では100人程度の小規模である。
  2. 参加事業者数と規模
    地域通貨への参加人数が増え、規模が大きくなればなるほど、多くの地域商店が参加する可能性が大きくなる。参加商店が増えれば、増えるほど多くの人が参加する可能性が高い。
  3. 形式と規模
    通帳形式では、500人前後が上限である。紙幣形式では、大規模な事例がある。更に、大規模になる場合は、電子的に集中管理する機能が不可欠である。
(2)北海道自治政策研修センター「豊かなコミュニティづくりを目指す地域通貨の可能性」による分類
1.第I類型  コミュニティの再構築・地域内交流の活性化
  1. 住民参加・人と人との交流促進
  2. 福祉・介護の増進
  3. 地域住民が考えるまちづくり
2.第II類型  市民活動・住民参加型行政システムの活発化・支援
  1. 環境保全・リサイクル:ゴミのリサイクル、河川の清掃、植樹といった環境保全等
  2. 文化・芸術・スポーツの振興:文化施設の保存、伝統文化・芸能の伝承、スポーツの振興を図るための活動に活用
  3. 教育関連を目的にするもの:社会教育的な面からボランティア活動に活用
  4. 地域の公共施設の維持、運営
3.第III類型  地域経済の活性化
  1. 商店街活性化及び地産地消の促進
  2. 起業化及びコミュニティ・ビジネス支援
4.第IV類型  広域的な地域経済の活性化
  1. 失業者・高齢者雇用対策
  2. より広域的な地域経済の自立

国内で実施されている地域通貨は、(1)−1、(2)−1、(2)−2―A、(2)−3が主であり、(2)−4についての実施はまだ少ないようである。

注)
・通貨: 強制通用力を有する貨幣の意で、鋳造貨幣・紙幣・銀行券の総称。
・貨幣: 商品交換の媒介物で価値の尺度、交換手段などとして社会に流通するもの。
本来はそれ自身が交換されるものと等価な商品で、昔は貝殻・獣皮・宝石・農作物など、のち貨幣商品として最も適した金・銀のような貴金属が漸次用いられる様になった。
(新村 出編「広辞苑」岩波書店による)

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