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景気動向調査 No.98  特集

「人口減少ならびに地方創生に関する県内事業者の意向」について

アンケート趣旨

2014年11月、地方の人口減少抑制を目的にその基本理念を定めた「まち・ひと・しごと創生法」が施行、12月には「地方における安定した雇用創出」などの総合戦略が示された。人口減少が続く和歌山県においても県ならびに市町村において、地方版総合戦略が策定される計画となっており、今後は、様々な施策・事業が展開される(以上の施策・事業展開をここでは「地方創生」として表記する。詳細は31頁参照)。そこで、今回のアンケートでは、県内事業者の地方創生に関する期待や政策ニーズを把握するため、以下のような質問を行う。


アンケート内容

 アンケート内容

   1.県内の人口減少が経営に与える影響
   2.人口減少に伴う「売上高の減少」への対応策
   3.人口減少に伴う「人材確保難」への対応策
   4.「地方創生」で期待される政策
   5.「地方創生」について
   6.「地方創生」で期待される政策(産業別)
   7.「地方創生」に向けた県内事業者の取組み
   (参考) 県内事業者の声

調査結果

過半数の事業者が人口減少による「売上高の減少」を懸念する中
“地方創生”で期待する政策は「地域観光の活性化」が最多

○人口減少が経営に与える影響では、5割強が「売上高の減少」、4割強が「人材確保難」を選択

○人口減少に伴う売上高減少に対して、6割強が「事業内容の見直し」を検討

○人口減少に伴う人材確保難に対して、過半数が「職場環境・待遇改善による人材募集」を検討

○県内事業者が期待する「地方創生」政策としては「地域観光の活性化」が最多。
  ただし、業種によっては、期待する「地方創生」政策に ”違い” が見られる

○地域の人口減少抑制に向けた取組みを独自に実施している(実施予定の)事業者は3割弱

1.県内の人口減少が経営に与える影響について

人口減少が経営に与える影響としては
5割強が「売上高の減少」、4割強が「人材確保難」と回答

今後も和歌山県では人口減少が予想される中で、この人口減少により、県内事業者は経営にどのような影響を受けるのかを質問したところ、「売上高の減少」とする回答が5割強で最も多く、「人材確保難」が4割強で続く。商業、建設業を中心に「取引先の廃業」とする回答も2割強あり、「影響はない」とする回答は8.2%となった。

○「売上高の減少」とする回答は建設業、商業、サービス業で多く、製造業では少ない

産業別に見た場合、「売上高の減少」とする回答は商業で74.2%と最も多く、サービス業の60.3%、建設業の56.9%が続く。業種別では、飲食業(93.8%)、生活・文化用品小売業(92.6%)、飲食料品卸売業(81.5%)で特に回答が多くなっている。

県外に販路を持つ事業者の多い製造業では18.0%と回答は少なくなっている。

○「人材確保難」とする回答は建設業、製造業、サービス業で5割前後見られる

産業別に見た場合、「人材確保難」とする回答は、製造業で56.9%と最も多く、建設業の52.8%、サービス業の48.6%が続く。業種別では、医療・福祉(70.6%)、機械・機械部品製造業(66.7%)、鉄鋼・金属製品製造業(64.7%)で特に回答が多くなっている。

現状において、人手不足感が他産業に比べると低い水準にある商業[*1] では、「人材確保難」とする回答は3割強とやや少なくなっている。

■図表 県内の人口減少が経営に与える影響について(全産業736社)
※アンケートを回収した802社のうち、無回答66社を除く736社が対象。

県内の人口減少が経営に与える影響(グラフ)

※図中の各項目下の( )内の数値は、無回答を除く回答事業者数を示す。

2.人口減少に伴う「売上高の減少」への対応策【複数回答】

人口減少に伴う売上高減少に対しては
6割強が「事業内容の見直し」を検討

「1.県内の人口減少が経営に与える影響」で「売上高の減少」と回答した事業者に対して、今後の対応策を質問したところ、「事業内容の見直し」を実施するとの回答が6割強で最も多く、続いて「他分野への進出」が2割強、「事業規模の拡大」が2割弱で続く。「事業規模縮小・廃業」は14.4%、「特になし」は8.1%だった。

○「事業内容の見直し」は製造業で最も多い

具体的な取組みとして「事業内容の見直し」を挙げた事業者は、製造業で73.3%と最も多く、建設業、商業、サービス業でも6割強の事業者が選択している。業種別では、木材・木工製品製造業、教養・娯楽サービス業、職別工事業などで特に多くなっており、これらの業種では合わせて「他分野への進出」を選択する事業者も多い。この理由としては、人口減少に伴う売上減が予想される中で、既存事業分野の将来性に不安を抱く事業者が多いことが背景にあると考えられる。

○「事業規模の拡大」は商業、サービス業で、「事業規模縮小・廃業」は製造業で多い

「事業規模の拡大」を今後の対応策として選択した事業者は商業、サービス業でともに2割弱となっており、建設業の12.8%、製造業の3.3%を上回る。その一方で、「事業規模縮小・廃業」との回答は、製造業で3割、建設業で17.9%となっており、商業、サービス業は1割強。

■図表 人口減少に伴う「売上高の減少」への対応策(全産業395社)
※「@県内の人口減少が経営に与える影響」で「売上高の減少」と回答した404社のうち、無回答9社を除く395社が対象。

人口減少に伴う「売上高の減少」への対応策

※図中の各項目下の( )内の数値は、無回答を除く回答事業者数を示す。

3.人口減少に伴う「人材確保難」への対応策【複数回答】

人口減少に伴う人材確保難に対して
過半数が「職場環境・待遇改善による人材募集」を検討

「1.県内の人口減少が経営に与える影響」で「人材確保難」と回答した事業者に対して、今後の対応策を質問したところ、過半数が「職場環境・待遇改善による人材募集」と回答した。その後には「高齢者雇用を増やす」、「省力化の推進」、「女性雇用を増やす」との回答が3割弱で続く。「事業規模縮小・廃業」は4.3%、「特になし」は4.0%だった。

○「職場環境・待遇改善による人材募集」はいずれの産業でも過半数の事業者が選択

具体的な取組みとして「職場環境・待遇改善による人材募集」を挙げた事業者は、いずれの産業でも5割超となっている。業種別では、医療・福祉、飲食業、飲食料品小売業、機械・機械部品製造業で特に多くなっている。

○ 産業別で特徴の見られる対応策

「職場環境・待遇改善による人材募集」以外の対応策としては、サービス業では「高齢者雇用を増やす」回答が4割弱、製造業では「省力化の推進」が4割、商業では「女性雇用を増やす」との回答が3割強と多くなっており、産業別で予定する対応策に違いが見られる。

■図表 人口減少に伴う「人材確保難」への対応策(全産業322社)
※「@県内の人口減少が経営に与える影響」で「人材確保難」と回答した335社のうち、無回答13社を除く322社が対象。

人口減少に伴う「人材確保難」への対応策(グラフ)

※図中の各項目下の( )内の数値は、無回答を除く回答事業者数を示す。

4.「地方創生」で期待される政策【複数回答】

県内事業者が期待する「地方創生」政策としては
「地域観光の活性化」が最も多い回答となった

県内事業者に期待する「地方創生」政策 を質問したところ、全体では「地域観光の活性化」が31.6%と最も多く、「地方移住の促進」が29.1%と後に続く。政策の具体的な内容については次表参照。

■図表 「地方創生」で期待される政策(全産業687社)
※アンケートを回収した802社のうち、無回答115社を除く687社が対象。

「地方創生」で期待される政策(グラフ)

※図表中では「まち・ひと・しごと創生法」の趣旨を踏まえ、政策を「まち」、「ひと」、「しごと」に区分して表記している。

5.「地方創生」政策について

○「地方創生」政策では、どのような政策が展開されるのか

「地方創生」について、今後は、都道府県ならびに市町村において、地方版総合戦略が策定される予定となっているが、この戦略策定の際には、国が12月に示した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を勘案する必要がある。そこで、ここでは、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で示されている主な政策について記述し、今後、どのような「地方創生」政策が展開されるかについて概要を表記する。

○「地方創生」の主な政策

「地方創生」の主な政策

6.「地方創生」で期待される政策(産業別)【複数回答】

期待する「地方創生」政策は
業種によって”違い”が見られる

県内事業者が期待する「地方創生」政策について、業種別に見たものが下図表である。各政策について期待する事業者の割合は業種によって違いが見られる。

○「地域観光の活性化」はサービス業を中心に幅広い業種で回答割合が高くなっている

○「地方移住の促進」は商業で回答割合が高い業種が目立つ

○「地域を担う中核企業支援」は製造業で回答割合の高い業種が目立つ

○「事業承継の円滑化、事業再生等」は製造業、商業で回答割合の高い業種が目立つ

■図表 「地方創生」で期待される主な政策5つ[産業別](全産業687社)
※アンケートを回収した802社のうち、無回答115社を除く687社が対象。

「地方創生」で期待される主な政策(グラフ)

※図中の各項目下の( )内の数値は、無回答を除く回答事業者数を示す。
 全産業の回答割合に対して、10ポイント以上高い回答割合のものは網掛け表示している。

7.「地方創生」に向けた県内事業者の取組み

地域の人口減少抑制に向けた取組みを
独自に実施している(実施予定の)事業者は3割弱

地域の人口減少抑制を目指し、独自に取組みを実施しているかどうかを質問したところ、最も多い回答は「実施しておらず、今後も実施予定なし」(43.1%)となったが、13.4%が「実施している」、15.3%が「今後実施を予定」と回答しており、政府や自治体による「地方創生」政策だけではなく、地域の事業者においても、「地方創生」を目指す動きが一定数見られていることがわかった(下図表参照)。

○事業者が独自に実施(実施予定)している取組み

「実施している」、「今後実施を予定」の事業者に、具体的な取組み内容について質問したところ、「事業承継の円滑化、事業再生、経営改善支援」が最も多く、その後には、「地域観光の活性化」、「若い世代の経済的安定」、「地域を担う中核企業支援」、「農林水産業の成長産業化」が続く。

■図表 「地方創生」に向けた県内事業者の取組み(全産業522社)
※アンケートを回収した802社のうち、「C 「地方創生」で期待される政策」で「20. 期待できる政策は選択肢にない」、「21. わからない」を回答した60社ならびに無回答220社を除く522社が対象。

「地方創生」に向けた県内事業者の取組み(グラフ)

※図中の各項目下の( )内の数値は、無回答を除く回答事業者数を示す。

(参考) 県内事業者の声(アンケート自由回答欄より)

人口減少ならびに地方創生について
自由意見 窯業・土石品製造業
「地産地消の徹底、インフラ整備が重要。特に通信速度は、地域格差が大きすぎる。」
自由意見 飲食料品小売業
「自治体が地域の商店でなるべく商品を購入することが、地方創生につながると思う。大手スーパーや量販店の出店、インターネット販売により、地域の店が疲弊している。学校用品などは地元商店の紹介、あっせんが必要ではないか。」
自由意見 繊維製品製造業
「和歌山県外の大学に進学し、就職は和歌山でと考え、Uターン就職活動をしてもなかなか和歌山では就職先がないという話をよく聞く。大企業の工場誘致などを行い、交通を整備する等、様々な取り組みをお願いしたい。和歌山は海も山もあり、良いところがいっぱいある。和歌山の良いところをアピールできるような政策を期待している。」
自由意見 その他の卸売業
「観光による交流人口の増加を推進する。南紀白浜空港を生かす方法を検討してはどうか。」
自由意見 建築材料卸売業
「働くところがなければ、人口は必然的に減少する。世界に誇れる観光資源のある和歌山県は観光県として発展する道を選ぶべき。企業誘致は立地上不利ではないか。」
自由意見 飲食料品卸売業
「人口減少に歯止めをかけるためには、出生率の引き上げが基本だと考えるが、そのための政策がない。30年ぐらいかけて出生率を引き上げるというビジョンを示してほしい。さらに、女性の地位向上の政策が不可欠。取締役や管理職への登用を法律で促進すべき。」
自由意見 飲食料品小売業
「福祉産業で雇用を促すため、都市部の人たちが福祉施設に入所できるような(国民保健の負担を都市部が負う等)法整備を望みたい。」
自由意見 建築材料卸売業
「市内中心部の空家を解体し売却しやすいような税制、補助金を検討して欲しい。今のままでは中心市街地の空洞化はなくならない。」
自由意見 自動車整備業
「公立大学の設置が必要。大学における昼食事業だけでも、ぶらくり丁等の中心市街地は活性化できる。」
自由意見 不動産取引業
「津波等の被害予想地区が増える中、第一種農地の農地転用可能地域を増大して欲しい。」
自由意見 機械・機械部品製造業
「地方創生については、限られたパイを地方で奪い合うようでは、総倒れになる懸念がある。各地方が受け身ではなく特色を生かして行動することが重要。」
自由意見 自動車小売業
「「ここに住み、生きていく覚悟」を子供たちに見せることのできる大人が増えないと、人口減少には対処できない。人の数より、「質」を高めることが重要。」
自由意見 機械・機械部品製造業
「結婚適齢期における結婚活動を推進させ、結婚後も生活が十分行えるようにより多くの援助を実施する。」
自由意見 繊維製品製造業
「まずは人や物が行き来しやすいように道路整備、バス、電車などの交通網の整備・充実にも力を入れてほしい。」
自由意見 機械器具卸売業
「1泊2日の観光小旅行がしやすい観光拠点づくりが重要。」

おわりに

○国内経済情勢は回復に向かう

2014年4月の消費増税以降、国内企業の景況感には、なかなか持ち直しの動きが見られない状況が続いた。円安進行に伴う輸入物価の上昇や消費増税を受けた物価高は、幾分の賃上げが進んだとはいえ、十分とはいえない家計にとっては影響が大きく、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比マイナスの状況にある。さらに、昨年10月の日本銀行による追加の金融緩和等を受けて、円安は対ドル120円前後の水準まで進み、仕入コストのさらなる上昇を懸念する事業者が和歌山県内では多く見られた。ただし、このような状況も昨年末以降徐々に変化が見られている。東南アジア、米国向けの輸出が増加し、製造業の生産活動も持ち直しの動きを見せている。さらに、昨年夏場以降の原油価格の急落を受けて、個人消費マインドにもようやく改善の動きが見られるようになり、内閣府は3月発表の「月例経済報告」において8ヶ月ぶりに基調判断を引き上げた。

○県内景況感は国内に比べると弱さがあるが、緩やかな改善が続いている

和歌山県内の景況感は、4〜6月期の見通しには弱さを残すものの、1〜3月期は昨年10〜12月期に続いての改善となった。また、仕入価格の上昇懸念の緩和もあり、1〜3月期は売上高BSI値が下降する中、収益BSI値は上昇しており、県内事業者の収益状況には変化の兆しも見られている(下図表)。

■図表 売上高BSI値と収益BSI値の推移

売上高BSI値と収益BSI値の推移(グラフ)

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

○収益状況の改善がさらに進むかどうかが注目される

今後の景況感がどのように推移するかは、収益状況の改善がさらに進むかどうかに左右されると考えられる。仕入価格の上昇懸念は徐々に和らぎつつあるものの、依然として4割近い事業者が仕入価格は「上昇」していると回答している。その一方で、販売価格は「上昇」との回答が2割に満たない状況にあり、収益状況の改善には、価格転嫁のさらなる進捗が望まれる。

当研究所では、この県内事業者の収益状況に注目しながら、引き続き、景気動向調査等の各種調査を通じて、有用な情報を提供することに努めてまいりたい。

参考情報

  • [*1]
    製造業についても、現状の人手不足感は他産業に比べて低い水準にあるが、商業よりも「人材確保難」とする回答が多くなっており、将来的な人手不足感の強まりを懸念する事業者が多い可能性が考えられる。

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