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和歌山県の人口 〜平成22年国勢調査速報値結果から〜

主任研究員  松村光一郎
主任研究員 法山 秀樹

国勢調査は、人口、世帯などの状況を明らかにするために行われる、国の最も基本的な統計調査で、平成22年に行われた国勢調査について速報値結果が総務省より公表されている。

速報値結果は表1のとおりである。表1は平成17年、及び各自治体が公表している平成23年4月1日現在の「推計人口」(注)を合わせて掲載し、全国及び近畿2府5県の人口を調査したものである。

(注)推計人口:国勢調査による人口を基に、その後における各月の人口の動きを他の人口関連資料から得て、毎月1日現在の人口を算出したもの。

近畿2府5県の人口(表)
近畿2府5県の人口(グラフ)

平成22年と平成17年の国勢調査の結果をみると、大阪府、滋賀県を除いて人口は減少傾向にあり、平成23年4月の推計人口と平成17年の国勢調査結果の差をみると、和歌山県の人口は約4万人減少している。また平成23年4月の推計人口では、近畿の中で唯一100万人を切り、奈良県との差は40万人となった。平成17年の人口を100としてその変化をグラフにすると、和歌山県の減少振りが際立っていることがわかる。

一般に地価の下落により都心回帰の傾向にあるといわれているが、和歌山県内ではどうか。表2は近畿の各県庁所在地の人口を比較したものであるが、これを見ると大津市の増加率が大きく、大阪市、神戸市でも人口の増加が見られる。和歌山市は平成23年4月と平成17年10月比較で約8千人減少しており、津市と並んで減少率が大きいという結果になり、和歌山県においては「都心回帰」が当てはまらないことがわかる。

県庁所在地の人口の状況(表)
県庁所在地の人口の状況(グラフ)

また表3では和歌山市の近隣地域の人口比較であるが、県内を見ると岩出市を除いていずれも人口が減少し、海南市、有田市の減少率が目立つ。岩出市も増加傾向にあるといっても、近隣の人口の減少を吸収しているとは言い難い。結果県内経済の中心となるべき県北部地域が和歌山県全体からみてもその求心力を失いつつあるといえる。さらに和歌山県に隣接する大阪泉州地域の人口の推移を見ると大阪府最南端の3市町は減少し泉佐野市、貝塚市がほぼ横ばいで推移していることから、和歌山県北部は隣接する泉州地域からも人を取り込めておらず、県全体が大きく人口を減らすことになっている。

和歌山市及び近隣市の人口(表)
和歌山市及び近隣市の人口(グラフ)

人口の増減に自然増減と社会増減がある。自然増減は出生の数と死亡の差、社会増減は流入と流出の差である。和歌山県の人口減少の要因としては、自然減より社会減の方が大きい。ではなぜ和歌山県の減少率が大きいのか。人がその地で生活する大きな理由に、@収入を得られる場所があること、A住居を確保しやすいこと、があげられる。和歌山県の場合はどうか。

表4は県全体と県北部3市の事業所数および従業者数の推移である。県全体でみると平成8年から平成18年の10年にかけて8千あまり、事業所数が減少し、従業者数は実に約5万人も減少している。そのうち和歌山市では県全体の減少分の5割近い事業所が減少している。働く場所が減るとやむなく県外に働き場所を求めることになる。

事業所数

また住まいの確保の観点から、公示地価を単純平均した価格で比較すると表5のとおり、泉州地域を含めてみても和歌山市が最も高くなっている。住宅購入の際は、予算、通勤の利便性、日常生活の利便性が物件決定の重要な要素であるが、県外へ働き場所を求めた人が、利便性や価格の点で劣る和歌山市内に物件を求めることは、よほどの事情がない限り期待できない。仮に和歌山市内に働き口が見つかったとしても、通勤の利便性にそれほど差がなければ、県外に物件を求めることはなんら不思議なことではない。

従業者数

表6、表7は新築分譲物件の平均と、各市主要駅からJR和歌山駅または南海本線和歌山市駅までの乗車時間を調査した表である。標準的な物件(4LDK)の広告価格と土地・建物の面積をそれぞれ平均して比べたものである。大阪府最南部が1百万円〜2百万円高いがその分土地が広くなっている。広告価格を土地面積で単純計算すると単価に差はない。乗車時間も大阪最南部は和歌山市周辺地域とそれほど変わらない。つまり、通勤の利便性と物件価格のみに重点を置いてざっくりと住宅購入の対象地をまとめると表9のようになる。和歌山県北部が泉州地域に比べ劣勢であり、今後も県北部の事業所の減少が続くとこの傾向はよりいっそう鮮明になってくると予想される。

公示地価(住宅地:H23.1.1)の平均
新築戸建(4LDK)広告価格
JR和歌山駅または南海和歌山市駅までの乗車時間
住宅の購入対象地域

ではどうすれば和歌山県から人口の流出を抑制することができるのか、どのような方法で他府県から人を呼び込むのか。県内経済の発展の為に、企業や大学の誘致、高速道路、京奈和道路、あるいは第二阪和道路の延伸工事の実現など、様々な施策が実施されている。インフラの整備はもちろん必要条件ではあるが、国土軸からはずれ半島という地理的に不利な条件下にあることを考えると十分条件ではない。

前述したように県民が生活するには県内に働く場所がなければならない。地道な企業誘致を怠ることなく続ける一方で、新しい産業を県が強力にバックアップして育成し、国内はもちろん海外に向けても売り出せるだけのことをしないと県民に働く場所を提供できない時代なのではないか。例えば急速に進む高齢化に対応できるよう、高齢者福祉関連産業の育成、女性の社会進出を支える産業の育成、あるいはメガソーラー事業、砂漠の緑化事業などの環境関連の産業育成、物理的な距離をそれほど必要としないITを駆使したサービス産業(例えばコールセンターの誘致、アニメやゲーム産業)の育成、天候に左右されない農産物生産システムの構築などが考えられる。

企業の生き残り戦略の一つに「ニッチを極める」がある。大企業や世界の企業とと同じ土俵で戦うよりも、市場規模は大きくないが、誰にも真似できない技術や手法で世界的なシェアを握る戦略である。国内市場だけを考えると地理的条件の不利は今後も変わらないのだから、いっそ海外に目を向ければ可能性は無限に広がる。

(2011.7)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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