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健康長寿研究 和歌山

研究部長  福田 光芳

はじめに

健康で長生きをしたいということは、多くの人々にとって共通の思いである。人の寿命については、従来からその指標として平均寿命が用いられてきた。戦後、我が国の平均寿命は、生活環境の改善、食生活・栄養状態の改善、医療技術の進歩等によってめざましく延伸し、平成27年では、男性80.77歳、女性87.01歳と、男性女性ともに世界トップクラスの長寿国になっている。

これから世界に先駆けて超高齢社会を迎える我が国では、健康な生活と長寿を享受できる社会の実現に向けて、単に寿命が長いというだけでなく、健康で長生きするという姿を示す健康寿命が重要であると考えられ、それをいかに伸ばすかが大きな課題となっている。

そこで、国では、国民の健康増進の総合的な推進を図るため、健康日本21(第二次)において基本方針を定め、健康増進の基本的方向とともに健康寿命の延伸をその目標に掲げ、健康長寿の推進に取り組んでいる。

本研究では、健康長寿施策を効果的に進めていくため、その要因や和歌山県の地域特性について調査分析を行い、今後どのような取り組みを行うかを考察することとする。

1 和歌山県の平均寿命と健康寿命

(1)平均寿命

平均寿命とは0歳における平均余命である。

和歌山県の平均寿命は、平成27年において男性79.94歳(全国44位)、女性86.47歳(全国41位)となっており、全国1位の男性滋賀県81.78歳、女性長野県87.67歳とそれぞれ1.84歳、1.2歳の開きがある。

(2)健康寿命

健康寿命については、様々な考え方があるが、健康日本21(第二次)において健康寿命の延伸について日常生活に制限のない期間の平均の延伸としてその目標に掲げているため、健康寿命は「日常生活に制限のない期間の平均」ととらえることとした。

和歌山県の健康寿命は、平成25年において、男性71.43歳(全国20位)、女性74.33歳(全国28位)であり、男女ともに全国1位の山梨県72.52歳、女性75.78歳とそれぞれ1.09歳、1.45歳の差があるが、全国平均を初めて男性女性ともに上回った。

表1 和歌山県平均寿命の推移表1 和歌山県平均寿命の推移

出典:厚生労働省「都道府県別生命表」

表2 和歌山県健康寿命の推移表2 和歌山県健康寿命の推移

出典:健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用効果に関する研究(厚生労働科学研究費補助金)
出典:健康寿命の指標化に関する研究-健康日本21(第二次)等の健康寿命の検討(厚生労働科学研究費補助金)

表3 全国の平均寿命と健康寿命表3 全国の平均寿命と健康寿命

出典:厚生労働省「都道府県生命表」
出典:健康寿命の指標化に関する研究-健康日本21(第二次)等の健康寿命の検討 (厚生労働科学研究費補助金)

2 健康長寿にかかる統計的分析

健康長寿を進めていくためには、平均寿命、健康寿命という指標が大変重要である。そこで、平均寿命及び健康寿命の延伸要因を探るため、統計情報からこれらと関係があると考えられる指標を都道府県単位で選択し、平均寿命及び健康寿命との関連性を相関分析の統計的手法を用いて分析した。

(1)各種指標と平均寿命及び健康寿命の都道府県格差の分析

平均寿命は平成27年「0歳における平均余命」、健康寿命は平成25年「日常生活に制限のない期間の平均」とし、都道府県単位における各種指標データを用いて、都道府県ごとの平均寿命及び健康寿命との間に相関関係があるかを分析した。その際、人口動態、保健、食生活、医療、介護、社会活動、産業経済等における都道府県別52指標データと平均寿命及び健康寿命との間で、それぞれ2変数間にどのような直線関係であるかを数値で表す相関分析を行った。その分析にあたっては、Pearsonの積率相関関数によることとした。

相関分析においては、2変数間が無関係であることを仮定した帰無仮説の優意性を有意確率5%で検定し、有意確率(両側)が5%未満の場合、帰無仮説は棄却され、2変数間に相関があると考えた。

直近のデータを基準として平均寿命は平成27年、健康寿命は平成25年のデータを用いたため、これらに影響を与える都道府県別指標データはそれ以前の指標データを用いるとともに、男女ごとの指標データがある場合は男女別々のデータを用いた。

(2)相関分析結果

平均寿命及び健康寿命と52指標データとの相関関係の分析は表4のとおりである。

分析の結果、有意確率(両側)が5%未満となった31指標が平均寿命及び健康寿命との関連が認められた。

分野別でみると

分野 正の相関が認められた 負の相関が認められた
(1) 人口動態 ・就業率(平均寿命男女、健康寿命男女)
・65歳以上就業者割合(平均寿命男)
・1世帯当たり人数(健康寿命女)
・三世代同居割合(健康寿命女)
・人口密度(健康寿命女)
・1人暮らし高齢者世帯割合(平均寿命男)
・自殺死亡率(平均寿命男女)
(2) 保健 ・習慣的喫煙者割合(平均寿命男)
・メタボリックシンドローム該当者・予備軍割合(平均寿命男)
・肥満者割合(平均寿命男)
(3) 食生活 ・食塩摂取量(健康寿命女)
・肉類消費量(平均寿命男)
・牛乳消費量(平均寿命男)
・茶消費量(健康寿命男女)
・飲酒習慣者割合(平均寿命男)
・肉類消費量(健康寿命女)
(4) 医療 ・有訴者率(総数)(平均寿命男女)
・脳血管疾患年齢調整死亡率(健康寿命女)
・平均在位日数(平均寿命男)
・病床数(平均寿命男)
・療養病床数(健康寿命男)
・有訴者率(総数)(健康寿命男女)
・通院者率(健康寿命男)
・悪性新生物年齢調整死亡率(平均寿命男女、健康寿命男)
・心疾患年齢調整死亡率(平均寿命男女、健康寿命男)
・脳血管年齢調整死亡率(平均寿命男女)
(5) 介護
・要介護認定率(平均寿命男、健康寿命男女)
(6) 社会活動 ・ボランティア参加率(平均寿命女)
・社会体育施設数(健康寿命女)

(7) 産業経済 ・1人当たり県民所得(平均寿命男)
・第1次産業就業者割合(平均寿命女)
・第3次産業就業者割合(健康寿命女)
・生活保護率(平均寿命男、健康寿命男女)
(8) その他 ・平均気温(平均寿命女) 

表4 平均寿命及び健康寿命と各指標との相関表4 平均寿命及び健康寿命と各指標との相関

注)有意確率5%未満p<0.05は☆、参考に有意確率1%未満p<0.01は☆☆と表記

出典:筆者作成

3 分析結果と和歌山県における健康長寿要因

平均寿命及び健康寿命と都道府県別指標との相関関係の分析をした結果、有意確率(両側)5%未満となった指標について、相関関係が認められても、和歌山県の指標が全国的に順位度の高い指標データであればすでにプラスに働いているため、全国的に順位度の低い指標データかどうかの判断が必要になる。また、正の相関か又は負の相関かによってはその要因は逆に働く。

そこで、指標データが以下の基準である指標が、平均寿命及び健康寿命を低くしている可能性が高い要因であると推定した。

<基準>

平均寿命、健康寿命と指標との間に

A 正の相関があり、各種指標が全国順位下位10位以内(全国38〜47位)
B 負の相関があり、各種指標が全国順位上位10位以内

この基準によって整理したのが表5及び表6であり、平均寿命、健康寿命ごとに和歌山県の健康長寿のために可能性の高い要因としてまとめた。

<推定要因>

(1)平均寿命

(1) 人口動態 ・「就業率が高い」男女
・「1人暮らしの高齢者世帯の割合が低い」男
(2) 保健 ・「メタボリックシンドローム該当者・予備軍割合が低い」男
(3) 医療 ・「病床数が少ない」男
・「悪性新生物年齢調整死亡率が低い」男女
・「心疾患年齢調整死亡率が低い」女
(4) 介護 ・「要介護認定率が低い」男
(5) 社会活動 ・「ボランティア参加率が高い」女
(6) 産業経済 ・「第1次産業就業者割合が低い」女

(2)健康寿命

(1) 人口動態 ・「就業率が高い」男女
(2) 食生活 ・「肉類消費量が少ない」女
・「茶消費量が多い」男女
(3) 医療 ・「通院者率が低い」男
・「悪性新生物死亡率が低い」男
(4) 介護 ・「要介護認定率が低い」男女
<分析によって推定された健康長寿要因>

分析の結果、和歌山県の健康長寿を進めていくための要因として優先的に取り組む項目は以下のとおりである。

◎ 就業率が高い
◎ 1人暮らし高齢者世帯割合が低い
◎ 悪性新生物年齢調整死亡率が低い
◎ 要介護認定率が低い

表5 平均寿命と指標との相関表5 平均寿命と指標との相関

出典:筆者作成

表6 健康寿命と指標との相関表6 健康寿命と指標との相関

出典:筆者作成

なお、今回の分析は、分野ごとの個々の指標との関連分析であり、平均寿命及び健康寿命に与えている根拠が必ずしも明らかになっていない。むしろ1つの指標が単独で平均寿命及び健康寿命に対して機能するだけでなく、複合的に絡み合っている可能性がある。

また、各種の指標と平均寿命及び健康寿命との関係を線形にとらえているため、分析にはある一定の限界がある。

都道府県ごとの平均寿命、健康寿命、各種指標データを使用したためデータ数は限定的で、厳密な意味での都道府県ごとの健康長寿について有効である要因をすべて分析しきれているわけではない。

終わりに

健康寿命は、健康で長生きするための指標として直接的に表している指標である。しかし、健康寿命だけでなく平均寿命も重要な指標である。平均寿命と健康寿命の差を埋めるための健康寿命の延伸だけでなく、平均寿命の延伸に向けての取り組みも行わなければならない。平均寿命の延伸以上に健康寿命の延伸に取り組む方策が必要なだけである。

健康で長生きするためには、ただお金や人材だけをむやみに投入しても解決しない。地域ごとに寿命や健康を損なう要因を調べて対策を講ずるしかない。

本研究が今後の対策にひとつの方向性を示す一助となるとともに、平均寿命及び健康寿命のより一層の延伸を期待したい。

改善点があるということは伸びしろが多いといえる。ひとつひとつ改善していくことが健康で長生きになる健康長寿の方法であると考える。

(2018.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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