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香港レポート −日本産農産物の輸入国としての実情と今後のすがた−
  Part2 「食料事情及び量販店等の状況」

研究部長  藤本 幸久

4 香港における食品プロモーションと課題

和歌山県は、香港フードエキスポ2017(2017.8.17〜19)にブースを設置し、県内企業が商品をバイヤーにPRするほか県の観光案内も行なった。

今回は、角長(醤油)、木の国(ジェラート)、熊野フードファクトリー(蒲鉾)、勝喜梅(梅干)、セレネ(炭食品)、湯浅醤油(醤油)の6社が出展している。

従来のプロモーションは、日本食を幅広く紹介するということに重きが置かれ、販売結果を求めるという観点が充分であったとは言い難いのではなかろうか。

販売という点では、今までは日本人や日本食レストランを対象としたマーケットが主なターゲットであったことから、とりわけ商品説明の必要性が少なく、マーケティングのアプローチそのものがなかったに等しいと思える。

しかし、今後は海外各国におけるローカル・マーケットの消費者、外食産業関係者にも幅を広げていく必要があることから、市場分析、商品開発、パッケージング、商品説明、使い方や食べ方の情報提供、物流など、よりマーケティングの概念を取り込んだ取り組みが重要となってきている。

なお、これまで高級スーパーや日本食料理店での販売が中心であったものの、人口規模等を前提にすると、右肩上がりに販売を伸ばし続けるには限界があると思われる。今後は、新たな分野への販路拡大が必要となるであろう。

また、競争相手としては日本国内各産地だけではなく、比較的高品質かつ低価格を武器に香港への輸出を行う韓国や台湾、米国なども忘れてはならない。

2017年 食品プロモーションのスケジュール(2017.4〜2018.3)
2017年 食品プロモーションのスケジュール(2017.4〜2018.3)

(ジェトロ 国・地域別イベントカレンダー等より作成)

香港 FOOD EXPO 2017 和歌山県ブース
香港 FOOD EXPO 2017 和歌山県ブース
「香港 FOOD EXPO 2017」会場
アジア最大級の国際総合食品見本市
「香港 FOOD EXPO 2017」会場
香港コンベンション&エキシビション・センター

5 食料事情及び量販店等の状況

香港の食料自給率は1〜2%程度であり、輸入相手国としての日本の役割は高く、スーパーマーケットでも日本の食品は何でも揃うといっていいほど充実している。

なお、流通の寡占化や高級化がすすんでおり外食市場も巨大である。

ビジネス環境、物流インフラは整備され、食品輸出のハブ機能も持っており、公式上では輸入食品の約3割が再輸出され、うち6割弱が中国本土に再輸出されている。

消費者の特徴としては、高所得者が多い反面、貧富の差が大きいといえる。

価格には厳しいが、高品質なものには出費を惜しまない傾向がある。また、流行に敏感で、目新しい物を好むが、熱しやすく冷めやすい一面があるといわれている。

住居が狭く、台所、冷蔵庫が小さいという住宅事情を反映し、食品は毎日新鮮なものを購入する習慣がある。

なお、野菜、果物、肉、乳製品などの中国産食材がかなり輸入されており、香港政府だけでなく大手のスーパーは独自の検査も実施している模様だが、残念ながら外食産業で使われる食材はほとんどが中国産であり、外食をするときは中国産を避けることは不可能といえる。

香港における量販店の概要(2012年)
香港における量販店の概要(2012年)

(香港発展局資料より)

(1)百貨店等量販店の変遷

香港における日系の食品小売店の歴史は古く、1960年の大丸開店をスタートに、数々の百貨店・量販店等が進出した。

しかし、1990年代に入り、地元小売店との競争激化や家賃の高騰などにより、ヤオハンが香港で倒産、1995年には伊勢丹、三越が閉店し撤退した。

さらに、1998年には松阪、大丸、翌年は香港東急も閉店した。また、西友も撤退し店舗名はYATAに変更された。

そごうは、香港に2店舗を構えるが、経営は地元資本にかわっている。このため純粋な意味での「日系」の小売店は、アピタ(Apita)/ユニー(UNY)/ピアゴ(Piago)とジャスコ(JUSCO)のみである。

ローカル・マーケット「街市(ガイシー)」でも、日本産品に特化したコーナーをもつ店もあるが、日系のアピタ(Apita)、そごう(SOGO)、ジャスコ(JUSCO)などのスーパーでは日本の食材が手に入り、定期的に買い物をする日本人が多い。

肉や魚も日本産だけでなく、アメリカ、オーストラリア、ブラジル産などが日本産より若干安く売られている。日本産牛乳もあるがオーストラリアやニュージーランド産に比べるとやはり高価である。

ただし、「食の安全」には際限がないとはいうものの、香港の富裕層は中国産を一切口にしないともいわれている。

そごう(SOGO)
そごう(SOGO)
ジャスコ(JUSCO)
ジャスコ(JUSCO)
(参考)

ユニー株式会社(UNY CO.,Ltd)は、日本国内外に数多くのグループ企業を形成するユニー・ファミリーマートホールディングス内で、総合スーパー(GMS)店舗運営を担当する大手流通企業で、本社は愛知県稲沢市にある。

店舗ブランドである「アピタ(Apita)」は、広域商圏対応型の大型GMS(総合スーパー)であり、「ピアゴ(Piago)」は、地域密着型の品揃えとサービスを提供する中型・小型店が中心のSM(スーパーマーケット)としてスタートしている。

(2)スーパーマーケット(超級市場)

日系・イギリス系・地元の香港資本のスーパーがあり、その様子も店舗によって大きく異なる。地元資本のスーパーは、高級スーパーと一般的なスーパーに分かれており、取扱商品も系列店舗によってまったく異なる。

地元の一般的なスーパーでは、中国本土産の野菜や果物を中心に、加工食品ではほかの外国からの輸入食品も多く並んでおり、数や種類は豊富ではないものの、日本産食材も取扱われ多くの香港市民の生活を支えている。

日系スーパーでは、香港で生活をしている日本人だけでなく、香港市民も多く買い物を楽しんでいる様子が窺える。日本の食材はたいてい手に入るが、中国産や韓国産、台湾産の食材と比較すると日本産のものは価格が高く高級品であるといえる。

リンゴやイチゴでは台湾産やアメリカ産の安いものと比較して、日本産は3倍から、高いもの(イチゴなど)では10倍ほどの価格で販売されている。

また、日本で3パック90円程度の納豆なども、香港では17ドル〜20ドル(約240円〜280円)と、日本で購入する場合の約2倍以上の価格となっている。

全般的に日本産の野菜や果物や米などは日本で購入する場合の1.5倍〜3倍くらいの価格のものが多いように感じられた。

食品の安全性に関心の高い市民が多いためか、日系や地元の高級スーパーには必ず有機食材や食品コーナーおよび健康食品のコーナーがあり、普通の野菜よりかなり高価であっても有機野菜を購入する人も多く見られた。

スーパーひとつでも香港市民の生活スタイルの多様性や食の安全性に関する意識などが垣間見え興味深かった。

ア)ローカルスーパーマーケット

ローカル系スーパーはウェルカム(恵康)とパークンショップ(百佳)がもっとも有名である。この2店は庶民派スーパーマーケットとして親しまれており、香港中ほとんどの地域に店舗がある。

ウェルカム
ウェルカム
パークンショップ
パークンショップ
イ)日系スーパーマーケット

日系ではジャスコ(JUSCO)やアピタ(Apita)、ユニー(UNY)、そごう(SOGO)内のスーパーマーケットなどがある。在住日本人だけでなく日本産の食べ物を好む香港人で賑わっている。値段は日本国内のスーパーマーケットと比べると割高だが、海外の日系スーパーにしては比較的安い為、近隣諸国から遊びにきた海外在住日本人も利用している模様である。

UNY生活創庫
UNY生活創庫
アピタ(Apita)
アピタ(Apita)
ピアゴ(Piago)
ピアゴ(Piago)
New Yaohan(新八佰伴 マカオ)
New Yaohan(新八佰伴 マカオ)
ウ)高級スーパーマーケット

外国人が多く住む香港では外国の食材を幅広く扱う外国人向けのスーパーマーケットも充実している。ウェルカム(恵康)系列のマーケットプレイス(Market Place)やスリー・シックスティ(Three sixty)、パークンショップ(百佳)系列のグレート(GREAT)やテイスト(TASTE)、インターナショナル(Internatinal)、フュージョン(Fusion)、1996年に創業のシティ・スーパー(City Super)などが有名である。

マーケットプレイス
マーケットプレイス
グレート
グレート
テイスト
テイスト
インターナショナル
インターナショナル

欧米や日本からの高級食材を主に販売しているため値段が比較的高く、高級スーパーマーケットと呼ばれる。ローカル系スーパーマーケットとは違い、店内の商品は見た目も綺麗に並べられており、珍しい食材なども売られている。

今や世界中どのスーパーマーケットの常識といっても過言ではない「マイバッグ」の持参は、香港ではあたりまえである。

2009年7月7日よりスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどでレジ袋の有料化(1枚50セント)がスタートしている。店舗ごとにシンプルなデザインからオシャレなものまで、様々な種類のエコバッグが取り揃えられている。

なかでも、独特の商売方法は「買1送1」である。買い物好きな香港人の購買意欲を増進させるのが、「買1送1」(マイヤッ ソンヤッ:Buy 1 Get 1 Free)「1つ買うともう一つ無料)」というお買い得商品の販売方法である。

また、袋詰めは店員さんにおまかせである。香港のスーパーマーケットには日本のように購入した商品を袋詰めするためのカウンターがない。レジで商品購入の際に、店員さんが袋に商品を詰めてくれる。特に日系のスーパーでは、日本と同じように、生ものや、野菜などはビニール袋に入れてからマイバッグに入れてくれたりと、安心して任せられる。

新鮮な果物も豊富
新鮮な果物も豊富
日本の桃(そごう)@2,220
日本の桃(そごう)@2,220
(3)コンビニエンスストア

圧倒的なシェアを誇るセブンイレブンが900店舗以上、第2位はサークルKが約350店舗、そして上位2社と比べると、店舗数がかなり少ないVangoという3種類のコンビニエンスストアがある。

セブンイレブン
セブンイレブン
サークルK
サークルK
Vango
Vango

主力商品はやはりスナックとドリンクである。ご飯と一緒にコーラにファンタやセブンアップ、小腹が空けばお菓子にシューマイ、フィッシュボールにカップラーメンが定番である。

さらに、香港人の定番の飲み物といえば維他vitasoyの豆漿(豆乳)や麦芽飲料であり、味はかなり甘めである。

ペットボトルのお茶類では台湾から香港へ上陸した飲料メーカー「道地」の商品が多く、無糖シリーズ以外はやはりちょいと甘めの味付けである。コーヒー飲料や茶(香港式ミルクティ)なども多く、パッケージも独特でちょっと魅力的である。

薬膳(中国漢方)スイーツ系飲料の腰果核桃露は脾臓腎臓を補い、百合木瓜露は栄養補給、雪梨川貝海底椰は喉の調子が悪い時にとの効能らしきものが書いてある。

vitasoy
維他vitasoy
ミルクティ
茶(香港式ミルクティ)
薬膳スイーツ系飲料
薬膳スイーツ系飲料

冷めたいものを食べることをあまり好まない文化があり、チルドフードやカップ麺を食べるのに重要なセルフサービスコーナーがある。

ベーカリー併設や美味しい淹れたてコーヒーが人気で、菠蘿飽(ぽーろばう=パイナップルパン)や腸仔包(チョンジャイバウ =ソーセージパン)、尾包(ガイメイバウ=ココナッツ入りパン)は定番である。

また、雑誌コーナーの「るるぶ 中国版(繁体字)」は大人気で、まるで国内旅行のように日本旅行をしている人が多いようである。

(2018.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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