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「ウィズコロナ」における企業の取組事例
 〜 商業事業者を中心に 〜

研究員  藤本 迪也

1.コロナ禍の状況(2021年10月上旬)

○ 感染者数の減少

新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)の感染拡大により、日本国内では7月下旬以降、新規感染者数が急増し、8月下旬には1日の新規感染者数が2万人を超えた(感染「第5波」)。ワクチン接種が進む中で、65歳以上の高齢者への感染は減少したものの、10代〜30代での感染が増加した。ただし、9月に入ると、感染は収束に向かい、9月30日には、東京都など19都道府県に発出されていた緊急事態宣言が解除された。その後も、国内の新規感染者数は減少を続け、10月10日には4日連続で1,000人を下回った(2020年11月以来、約1年ぶり)。

○ 人出増加するもコロナ禍前の水準に比べて1割少ない

レストランやカフェ、ショッピングセンター、テーマパークなど小売・娯楽施設への人出状況を見ると(図表1)、9月下旬の3連休前後に人出が増加し、30日に緊急事態宣言が解除された後も増加傾向にある。ただし、コロナ禍前(2020年1〜2月)に比べると、1割程度少ない状況にある。

図表1 小売・娯楽施設の人出状況(全国、コロナ禍前との比較)
図表1 小売・娯楽施設の人出状況(全国、コロナ禍前との比較)

(注1)基準値はコロナ禍前(2020年1月3日〜2月6日)の5週間における当該曜日の中央値。
(注2)「小売・娯楽施設」はレストラン、カフェ、ショッピングセンター、テーマパーク、博映画館など
(資料) Google「コミュニティ モビリティ レポート」

○ 感染対策への意識は高いまま

10月4日、政府は国民の6割が新型コロナウイルスワクチンの2回目接種を完了したと発表した。同じく国民の6割前後がワクチン接種を完了している欧米主要各国では、人出状況が大きく改善しており、ドイツ・イタリアでは9月中旬にコロナ禍前の水準を超える人出となった(大和総研「日本経済見通し(2021年9月)」)。日本国内においても、ワクチン接種の普及により、人出状況・消費活動が大きく改善することが期待されていたが、ワクチン接種後も感染対策への意識は高く、外食や旅行機会が大きく増加しているとは言えない。 [*1]

図表2 ワクチン接種後の消費活動の変化(全国、コロナ禍前との比較)
図表2 ワクチン接種後の消費活動の変化(全国、コロナ禍前との比較)

(注)2021年8月10日〜12日にインターネット上でアンケート調査を実施。全国420名の男女対象。
(資料) 十六総合研究所「新型コロナウイルス禍における消費意識調査」

2.予想されるウィズコロナ社会

○ ウィズコロナ社会に向けた動き

政府はコロナ禍においても、経済活動の制限を最小限に抑えるため、「ワクチン・検査パッケージ」の社会実証を開始した。ワクチン接種済みまたは検査陰性者について、緊急事態宣言下においても、多人数での飲食店利用(飲酒あり)、収容率100%のイベント会場への入場、都道府県をまたぐ移動が可能となるよう、ワクチン接種証明・陰性証明の技術実証をイベント会場等で行っている。サッカーJリーグ公式戦において実施された社会実証では、観客上限数(1万人)を超えて、1800人の入場枠を追加した。入場時にワクチン接種証明・陰性証明を確認する仕組みを採用したが、確認スタンプをチケットに押す必要があったため、普及している電子チケットが使用できず、利便性への課題が提起された。

コロナ禍においても日常生活を最大限維持する「ウィズコロナ社会」を実現するためには、上記のような取り組みが欠かせない。感染拡大時においても、国民が必要以上に感染を恐れず、日常生活を維持できるための社会環境整備が重要になっている。国内においては、感染対策への意識が強いことから、感染拡大期に行動自粛につながりやすく、日常生活における「感染リスクの低減」と「感染拡大防止」に向けた取り組みが特に重要と言える。

図表3 ウィズコロナ社会に向けた動き

≪感染拡大防止≫

  • 基本的な感染防止対策の徹底(3密回避、ワクチン接種等)
  • 抗原検査キットの薬局での販売

≪感染リスクの低減≫

  • ワクチン接種証明書・陰性証明書の活用(社会実証中)

≪医療体制の強化≫

  • 感染拡大時の臨時医療施設の設置(コロナ病床の拡充)
  • 経口治療薬の実用化
  • 医療人材の確保

(資料)筆者作成

○ 「第6波」への懸念

7月以降のコロナ感染「第5波」が落ち着きを見せる中、ワクチン接種完了者への感染事例(ブレークスルー感染)が相次いでいる。また、ワクチン接種で先行した英国、ドイツ、米国、カナダなどの欧米各国でも、感染再拡大の動きが見られた。日本におけるワクチン接種は6月以降に大きな進捗を見せたことから、半年経過後の12月以降に感染「第6波」への懸念が残る。前述の通り、ウィズコロナ社会に向けた動きも見られるが、感染が急拡大した場合、行動自粛の動きが強まる可能性は高く、経済活動は引き続き、コロナ禍の感染状況に大きく左右されることが予想される。

3.「ウィズコロナ」における企業の取組事例

コロナ禍による経済活動への悪影響が今後も予想される中で、県内企業を含めて、この難局に対応すべく様々な取り組みが行われている。国・県においても、このような企業の取り組みをサポートするため「事業再構築補助金」などの支援策を展開している。

以下では、ウィズコロナ社会に対応するため新たな事業活動を展開している取組事例を、コロナ禍の影響の大きい商業事業者を中心に紹介する(紹介事例は国のコロナ支援策「事業再構築補助金」の採択案件から抜粋)。

図表4 ウィズコロナにおける企業の取組事例

川上・川下分野への進出
・鶏卵販売企業によるスイーツ開発/販売
・酒類販売事業に加えて移動販売車での生ビール量り売り事業の展開
サービス事業の展開
・SNS発信を趣味とする個人への撮影用レンタルスタジオの貸出
・インテリア販売に加えてガーデニングに関する個人向けコンサルティングへの進出
・工具卸売事業に加えて工場全体の自動化システムの提案事業への進出
・呉服販売事業から記念日向けのプレゼント提案/販売事業への進出
非接触事業の展開
・インターネット通販市場への参入
・オンライン展示会運営事業への参入
・ライブコマースの実施(インターネット上での動画実演販売)
社会課題解決型ビジネスの展開
・土産物販売事業に加えてドローンを活用した農薬散布事業への展開(地域農業支援)
・スポーツ用品販売事業に加えてスポーツを活用した高齢者福祉事業の展開
・建設資材販売に加えて、屋根工職人育成のための動画教材の制作・販売(人材育成)
・衣料品販売に加えて、顧客の持ち込む古着を再利用・高付加価値化して再販
最新技術の活用
・急速凍結技術を活用した冷凍食品市場への参入
・生花販売に加えて動画メッセージ付きフラワーギフトの販売
顧客一人ひとりのニーズへの対応(カスタマイズ)
・酒類販売事業に加えて、顧客のオーダーでつくる熟成焼酎の保管・販売

(資料)中小企業庁「事業再構築補助金」ウェブサイト内「採択結果」

参考情報

  • [*1]
    第一生命経済研究所「第4回新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査」(2021年9月実施)によると、ワクチン接種完了後の感染事例も見られることから、ワクチン接種者の4割以上が「感染する・させる不安」が減っていないとしている。

(2021.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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