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「コロナ後(アフターコロナ)」を見据えて
 〜 事業者にとって重要な3つの取り組み 〜

研究員  藤本 迪也

1.3度目の緊急事態宣言で打撃を受けた県内経済

○ 変異ウイルスの感染拡大

2020年12月20日、英国での変異ウイルスの感染拡大を受けて、フランスは英仏海峡のユーロトンネルを封鎖した。海峡付近の英国ドーバーにはフランスへの入国許可を待つトラックが長蛇の列を成し、物流網は大きく混乱した。これから約3か月後、日本国内でも変異ウイルスが急拡大し、4月25日には、3度目となる緊急事態宣言が東京都・大阪府など4都府県に発出された。

○ 大型連休期間を含めて人出は大きく減少

和歌山県においても、4月20日には過去最多となる55人の新規感染者を確認し、病床使用率は100%に迫った。このような厳しい状況の中で、和歌山市内の飲食店に対して営業時間の短縮が要請され、県民に対しては不要不急の外出自粛要請が出された。大型連休期間中(4/29〜5/5)のJR和歌山駅周辺の人出は、年末年始を下回る水準にまで減少し、飲食業、理美容業、娯楽業などの対個人サービス業や小売業などを中心に業況は悪化した。

図表1 JR和歌山駅周辺の人出状況(感染拡大前比)
図表1 JR和歌山駅周辺の人出状況(感染拡大前比)

(注)新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1〜2月の平日・休日平均の人出状況と比較した値。
(資料)NTTドコモ「モバイル空間統計」

○ 業績状況の悪化

県内事業者の2021年1〜3月期の売上高(対前年同期比)を見ると(図表2)、不動産業を除く全ての業種で前年を大きく下回っている。4〜6月期については、飲食店に対する営業時間の短縮、不要不急の外出自粛、府県間移動の自粛が要請されていることから、小売業、サービス業などを中心に、業績状況はさらに悪化していると考えられる。

図表2 県内事業者の売上高の増減(2021年1〜3月期、前年同期比)
図表2 県内事業者の売上高の増減(2021年1〜3月期、前年同期比)

(注)回答事業者の売上高の増減を業種別に単純平均した値。
(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2021年3月調査)

2.ワクチン接種による経済正常化への期待

2月に開始されたコロナワクチン接種は、その接種スピードを加速させている。[*1] ワクチン接種が進む欧米諸国では、経済活動への制限が徐々に緩和されており、外食、旅行需要には持ち直しの動きが見られる。日本国内における経済正常化の時期については、依然として見通しづらい状況にあるが、9月には接種完了者の割合が4割前後に達するとの試算もあり、[*2] 今後は「コロナ後」に向けて、その対応策を検討することが県内事業者には求められる。

○ 「コロナ後」の経営環境

ワクチン接種が順調に進み、外出自粛や営業自粛といった活動制限が緩和・解除された場合、以下のような経営環境の変化(既に見られている変化を含む)が想定される。

図表3 「コロナ後」の経営環境の変化

経営環境の変化 内容(2021年5月31日時点)
支援策の質的変化 ・政府系金融機関の「無利子・無担保」融資終了(2021年末予定)
・雇用調整助成金の特例措置の適用終了(2021年7月予定)
・新分野参入、事業転換の後押し(事業再構築補助金)
・早期再就職支援(トライアル雇用助成金)
需要の持ち直し ・外食、旅行、イベント(観劇・鑑賞・冠婚葬祭等)レジャー・娯楽などのサービス消費の持ち直し
・外出機会の増加に伴う服飾美容品などの財消費の持ち直し
・コロナ禍で延期されていた開発/設備投資の動き
ニーズの変化 ・インターネットを介した買い物機会の増加(取り寄せ・産地直送)
・オンラインサービス(映画・演劇・医療・ジム・旅行等)の増加
・家庭内調理機会の増加/居宅時間の増加
・健康意識/衛生意識の高まり
・無人店舗 / ロボット配膳などの非接触サービスの増加
・近隣観光 / アウトドア観光(混雑回避)の増加
・サブスクリプション(定額課金)サービスの増加
・働き方の変化(在宅勤務、リモート会議・商談、副業)
・脱炭素やデジタル化への対応
供給制約 ・需要回復に伴う仕入商品 / 人手の不足
・需給ひっ迫による仕入価格の上昇
・物流網ひっ迫による納期遅延
取引関係の変化 ・コロナ禍で変化した販売先・仕入先との取引内容の見直し
・コロナ禍以前の販売先・仕入先との取引内容の見直し

3.「コロナ後」に向けた3つの取り組み

前節で記述した「コロナ後」の経営環境の変化に対して、「経営改善計画の見直し」、「ICT活用による生産性向上」、「新たなニーズへの対応」といった3つの取り組みを実施することが、県内事業者にとっては重要になる。

○ 経営改善計画の見直し

コロナ禍において、業績状況が悪化する中、県内事業者の多くが、「無利子・無担保融資」を活用し、資金繰りの改善を図った。施策効果は大きく、多数の事業者の経営を下支えした。その一方で、財務状況の悪化は回避できず、経営改善計画の見直しが急務となっている。

国と和歌山県では以下に示す各種支援制度を用意しており、県内事業者においては、このような制度を活用しつつ、「コロナ後」に向けて積極的に準備を進めることが重要となる。

図表4 「経営改善計画の見直し」に係る国・県等の支援策

支援制度 内容 相談窓口
伴走支援型特別保証 ・金融機関とともに経営行動計画書を作成し、伴走支援を受けることを条件とする信用保証制度
・保証料補助あり
取引金融機関
早期経営改善計画策定支援 ・資金繰り計画や事業計画の作成に係る専門家への支払費用の2/3を補助 和歌山県経営改善支援センター
認定支援機関による経営改善計画策定支援 ・経営改善計画を策定し、金融機関への返済条件等を変更する場合に必要な専門家への支払費用の2/3を補助 和歌山県経営改善支援センター
○ ICT活用による生産性向上

「コロナ後」の景気回復期には、人材確保難が大きな経営課題になると考えられる。この課題に対しては、以下の支援制度を活用しながら、ICTによる生産性向上を進めることが期待される。

図表5 「ICT活用による生産性向上」に係る国・県等の支援策

支援制度 内容 相談窓口
和歌山IoT等導入促進プロジェクト事業専門家派遣 ・専門家支援チームを県内事業者に派遣し、ICTを活用した課題解決策を提案 和歌山県産業技術政策課
デジタル化専門家派遣 ・デジタル化やICTに詳しい専門家を県内事業者に派遣 最寄りの商工会議所・商工会
IT導入補助金 ・自社の課題やニーズに合ったICTツール(ソフトウェア等)を導入する際の経費(一部)を補助 和歌山県商工振興課
事業再構築補助金 ・ICTなどを活用し、新分野への展開、業種・事業転換に取り組む事業者を支援(システム購入費等の2/3を補助) わかやま産業振興財団
○ 新たなニーズへの対応

コロナ禍においては、消費者の行動変容、働き方の変化により、新たなニーズが多数生まれた。インターネット通販市場、料理のデリバリー・テイクアウト市場の拡大などが最たる例といえる。「コロナ後」においても「現在の生活スタイルを維持したい」とする消費者は多く、[*3] 県内事業者は新たなニーズへの対応が引き続き求められる。

新規ニーズへの対応については、国・和歌山県が以下の支援策を用意しており、県内事業者の積極的な活用が望まれる。

図表6 「新たなニーズへの対応」に係る国・県等の支援策

支援制度 内容 相談窓口
事業再構築補助金【再掲】 ・新分野への展開、業種・事業転換に取り組む事業者を支援(建物改修費、設備費、広告宣伝費等の2/3を補助) わかやま産業振興財団
副業・兼業人材活用補助金 ・新商品開発、新分野での販路開拓、インターネット通販市場への参入などに際して、首都圏等で働く専門人材の知見・スキルを活用するための各種取り組みを支援 和歌山県プロフェッショナル人材戦略拠点

参考情報

  • [*1]
    5月31日時点での1日のワクチン接種回数は約31万回(首相官邸ウェブサイト内「新型コロナワクチンについて」(2021年6月1日閲覧))。

  • [*2]
    野村総合研究所「ワクチン接種先行国における接種率と感染状況から見た今後の日本の見通し」(2021年5月31日リリース)。

  • [*3]
    博報堂生活総合研究所「新型コロナウイルスに関する生活者調査(特別編)」(2021年4月実施)によると、「コロナ後」においても、「現在の生活を維持したい」との回答が56.3%を占めている。

(2021.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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